知らない貴方と、蜜月旅行
その時に、放っておけないな。と、瞬時に思った。どうしよう…っていう、あの目。あの目に惹きつけられ『助けてやろうか』と、口にしていた。


「じゃあ…。梨々香さんへの想いは、もうないの…?」
「は?なに言ってんだよ。んなもん、あるわけねぇだろ」
「でも、じゃあどうして指輪を処分してなかったの?」
「処分、ねぇ。じゃあ、はい」
「え…」


俺は指輪を紫月に渡した。当然、紫月は戸惑いの表情全開で俺を見てきた。


「紫月が処分して」
「えっ?ヤダ、なに言ってるの?私、そういうつもりで言ったわけじゃないよ!?」
「わかってるよ。ただ、自分自身じゃ処分できないから。だから、紫月が捨てて」
「えぇっ…」


別に梨々香に、未練があるわけじゃない。もうあれから4年も経ってんだ。4年経って、前の女が忘れられねぇとか、気持ち悪ぃだろ。


「よし。そうと決まれば、海行くぞ」
「え?なんで海…?」
「指輪捨てるためだろ。ほら、行くぞ」
「いや、ちょっと、待って!私、捨てるなんてまだ言ってない!」


ギャーギャー騒ぐ紫月の腕を掴み、聞こえないふりをして、ホテルの外へと出た。


「うぉ、さすが12月だな。沖縄でも夜は少し寒ぃな。風邪引くなよ?」
「や、やっぱりヤダよ!私、人の思い出の品捨てるなんて、できないってば!」
「俺がいいつってんだよ」
「じゃあ、吏仁が自分で捨ててよ…!」
「それができねぇから、言ってんだろ」
「っ、やっぱりまだ好きなんじゃん!」
「チッ、めんどくせぇ」
「んっ…!」


好きだとか、忘れられねぇ、とか何度も言う紫月の口を黙らせようと、顎を人差し指で軽く持ち上げると、その唇に初めてキスをした。


「これで、分かったか?梨々香に未練なんかねぇんだよ」
「……っ」
「ベッドの上で、もっと分からせてやろうか?」


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