知らない貴方と、蜜月旅行
それはお互い様というか…。私もだったからなぁ…。〝そうだね〟とは言えない。


「あの…。それは、私もだから…」
「ん?」
「いや、だから、私も態度悪かったから…」


なんとなく気まずくて、顔を伏せるも、吏仁からの返事がない。不思議に思って、横をチラッと見ると眉間にしわを寄せて私を見ていた。


「えっ、なに?!」
「いや。お前、いつ態度悪かった?」
「えっ!?」


あれ、なにこの展開。予想してなかった展開なんだけど…!まぁ、すごい重い空気になるよりはいいんだけどさ。


「まぁ、いいか。飯、行くか」
「あ、うん」
「…その前に」
「うん?」


〝行くか〟の合図に立ち上がろうとした私を吏仁に、とめられて、もう一度座り直し吏仁を見た。


「もう、言うなよ」
「え?えっと、なにを…?」
「好きになれない、とか言うなよ」
「あ……」


そっか。吏仁は、これが嫌だったんだ。吏仁が本気で私を好きなのかは、正直分からない。だけど、もし本気で好きだとしたら、言われたくない言葉だよね。


「うん…ごめん、なさい。もう言わない」
「あぁ。けど、本気で好きになれないのなら、その時は言ってくれてかまわないから」
「……うん」


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