知らない貴方と、蜜月旅行
とりあえず吏仁は、一人にはされたくないらしい…。知らない土地だからかな?でも、どうしよう。このまま突っ立ってるのも、おかしいし…。


ウーン、と考え。あっ、と思い出す。そういえば吏仁、無理に話すんなって言ってたよね?じゃあ、放っておけばいずれ話しかけてくる…?


そう勝手に思い込むと、私はまたベッドの上に寝転んだ。……って、私まだパジャマだった…!やだ、もしかして吏仁、私がパジャマなのを見て止めたのかなっ。うわぁ…恥ずかしいっ。急に恥ずかしくなった私は、昨日と同じように布団を被った。


「紫月」


布団を被り、少し経った頃。吏仁が名前を呼んだ。これを無視したら、絶対にダメな気がして、ひょっこり顔を見せた。


「朝飯食ったら、海行くか」
「……うんっ」


たったこれだけの会話なのに、ものすごく嬉しかった。すぐに着替えて、軽く化粧をして。もう用意が終わってソファにくつろぐ、吏仁の隣にちょこんと座った。


「用意、できたよっ」
「お、おぅ」


あれ。私、張り切りすぎた…?若干、吏仁が引いてる気がするんだけど…。気のせい、だよね?……そう信じたいっ。


「……悪かった」
「え…?」
「さっき態度悪かったろ、俺」


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