アルチュール・ド・リッシモン

法学者の支持

「自分の息子を王太子としても認めず、他国の王に王位を譲り渡すとは、けしからん! どうかしておるぞ! そんなに簡単に自国を他国に売り渡す王がどこにおるのだ!」
 その頃、パリの高等法院では、トロワ条約とヘンリー5世とカトリーヌ姫の結婚を受け、そんな怒号が飛び交っていた。
「パリ大学と三部会は、トロワ条約を支持したそうだぞ?」
 そう言ったのは、質素だが一応学生らしい恰好をした黒髪の青年だった。
「何か浦賀あるはずだ。絶対、利権が絡んでいるだろう!」
 そう言ったのは、栗色の巻き毛に緑色の瞳の青年だった。
「まぁ、そうだろうな。そういう利点無しに彼らが支持するとは思わんからな」
 頷きながら黒髪の青年がそう言うと、栗色の髪の青年も頷いた。
「で、どうする? 我々は王太子を支持するのか? パリ大学はイングランド派になったというのに」
「それだ! 大学がイングランドに牛耳られているというのが気に食わん!」
「俺もだ! ここは、フランスだしな!」
「では、どうする?」
「どうするもこうするも、王太子を支持するしかなかろう、ジャン?」
 栗色の巻き毛に緑色の瞳の男がそういうと、黒髪で少し顎鬚が伸びたジャンは頷いた。
「そうだな。癪にさわるが、我々だけは味方してやろうではないか。法律的に見ても、気まぐれな王族どもに全て任せるというのは嫌だしな」
 ───こうして、パリ大学はヘンリー5世を支持したのに、法学者達はシャルルを支持したのだった。
 他に彼を支持したのは中小貴族達だったが、大学出の司祭や財界人、大貴族らじゃこぞって皆ヘンリー5世を支持していた。
 それゆえ、まだまだシャルルの勢力は弱かったといえる。
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