アルチュール・ド・リッシモン

フィリップ豪胆公

「三人とも仲がいいようで、何よりだ」
 そう言って三兄弟に近付いて来たのは、恰幅のよい男であった。
 頭髪は全て白くなっていたが、禿げてはおらず、恰幅もよかったので、年より若く見えた。実際の年齢はオリヴィエ・ド・クリッソンと変わらなかったのに彼より若く、精力的に見えたのである。
 フィリップ・ル=アルディ。別名「大胆公」や「豪胆公」と呼ばれるブルゴーニュ公であった。
「あの………」
 三兄弟の中で最も年長のジャン5世が遠慮がちにそう声をかけると、白髪の逞しい男は微笑んだ。
「フィリップ・ル=アルディ。ブルゴーニュ公だ。そなたらのこおは、これから私が面倒を見る。よいか?」
 人のよさそうな顔に、強そうで頼りになりそうな体格。その人物からの申し出に、三兄弟は顔を見合わせた。
 まず最初にアルチュールが頷き、それに応じてジャン5世も頷いた。続いて一番下のリシャールも頷き、豪胆公の服の端を掴んだ。無邪気に微笑みながら。
 豪胆公はそれを見ると、満足げに頷きながら、兄弟の頭を順に撫でていった。
「フィリップ………」
 そんな彼らの所に又一人、男が近付いて来た。フィリップの白髪と同じような灰色がかった巻き毛に、彫りの深い顔。だが、体の線は彼より全体的に細かった。
「これは、ジャン兄上ではないですか。こちらは、先程クリッソン殿から叙任されたばかりのブルターニュ公ジャン5世殿ですぞ」
 豪胆公がそう言ってまだ11歳のジャン5世を紹介すると、灰色の男は微笑んだ。
「叙任式なら、私も見ておった。よくある名とはいえ、同じ名ゆえ、他人事とは思えんしな」
「それはよかった! 我らにとっては孫のような年の子達ですので、しっかり教育してやりましょうぞ」
「そうだな………。ならば、その為にも、フィリップには今少し自重してもらわねばな」
「自重………ですか?」
 その言葉に、豪胆公は顔をしかめた。
「オルレアン公ルイ殿とのことだ」
 灰色の男、ベリー公ジャン1世がそう言うと、豪胆公は露骨に顔をしかめた。
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