金曜日の恋奏曲(ラプソディ)


「ええええ、凄い進歩じゃん!!」



ウインナーを頬張って、りっちゃんは驚いたように、口に手を当てた。



金曜日のお昼の時間、いつも通り私の机に、りっちゃんが前の席の椅子を持ってきて、2人で向かい合って食べる。



「良かったね~しかも結構相手から来てくれてる感じなんじゃないの~?」



私の手を握って、まるで自分のことのように喜ぶりっちゃんに、私は照れて笑った。



先週の金曜日のあの後も、ずっと私達はあのベンチに座っていて、辺りが真っ暗になってからやっと、二人で慌てて家路についたんだ。



何をしてたかって言うと...本当に文字通り時を忘れて、何の話をするでもなく、座ってただけ。



...理屈抜きに、ただ一緒にいたかった、っていうか...。



ずっと心の奥があったかくて、心地よくて、離れたくなかった。



最後、たい焼きのお金を払おうとしたら、須藤くんが頑なに拒否して



「...ちょっとくらい、カッコつけさせて?」



て、上目遣いで私を見たこと、ハッキリと覚えてる。



...なんで、こんなに、須藤くんは私の心を掴むのが上手なんだろう。



仕草もそうだけど、言うことなすこと、私の心の中を透かし見てるみたいだ。



やっぱり、感じることや言葉の選び方が似てるからなんだろうか。



いちいちの言葉にドキドキして、そろそろ心臓がもたなくなりそうだ。



なのに、それでもずっと一緒にいたいって思うもんだから。



別れる時はこれまたどうしようもなく切なくて、名残惜しくて、これからまたあの会えない1週間が始まると思うと、心がどんより翳る。



...私がどんなにあなたの事を好きなのか、知らないでしょう?



...少しはため息もつかせてね、なんて、少しセンチメンタルになってみる、私。



と、りっちゃんが私に尋ねた。



「…ねぇねぇ、今更だけどさ、須藤くんて、どんな人なの?」



「...ど、どんな人...。」



突然の質問に、私は口ごもる。



改めて聞かれると、一言でこう!とは言えないタイプかもしれない...。



思いつくことを順に、ゆっくりと言葉にしていった。



「...なんだろ...普通の男子とは違う、何かがあって、上手く言えないけど、どこか空気が繊細...っていうか、新鮮ていうか、綺麗な感じがして...。

全然騒がしいタイプの人じゃないんけど、静かな人、とはまた違う...。

よく、気付いてくれてて、なんか、賢い気がするし...。

私を和ませようとしてくれて、面白くて...。

...私と、似てるところも多い...。」



あ、それと、と私は付け加えた。



「...もの凄く優しいの...。」



自然と、顔がほころんだのが自分で分かった。



雨の日とかもそうだけど、そもそも最初のバックの中身をぶちまけた所で、須藤くんが拾ってくれて無かったら、何も始まってないもんね。




...けど、それだけじゃないんだよな、と私は首を捻った。



色々並べ立ててみたことも、優しいのも本当だけど、それだけでは須藤くんが表せていない気がする。



何か、はっきりとは言えないけど、須藤くんのあの優しさを、私は、知ってる気がするんだ...。

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