金曜日の恋奏曲(ラプソディ)
考え込んだ私に、りっちゃんが苦笑いした。
「あーごめん。そんな深い意味で聞いてないから、無理して絞り出さなくてもいいよ。」
「...ううん、無理はしてないんだけど、何か...。」
出てきそうで、出てこないんだ...と机を見つめながら、私は、何気ないりっちゃんの気遣いに思い当たった。
...いつも、こんな風に上手く喋れない私を辛抱強く待ってくれて、よく聞いてくれるりっちゃん。
...そうか。そうなんだ。
私は顔を上げて、りっちゃんに言った。
「...須藤くんは、りっちゃんに似てるところがあるんだ。」
二人とも、私がすぐに言葉を出さなくても、辛抱強く待ってくれて、私の心を安心させてくれる。
周りの人のことを気遣ってくれる優しさを、2人は持っていて、私はそれに何度も救われて来たんだ。
「...えぇ?そうなの?」
りっちゃんが意外そうに、声を上げた。
「...うん。」
笑ってそう返事をしたら、なんだか、私はとても嬉しくなった。
それを見て、りっちゃんも笑う。
...今思えば、その時、りっちゃんの笑顔が少し、さみしそうに見えた。
でもその時の私は、少し違和感を感じただけで、何も聞かずに話題を変えてしまった。
「...りっちゃんは先週好きな人とどうなったの?」
「...えっ。」
一気に真っ赤になるりっちゃんは、本当に恋する乙女で、これは何かあったな、と野次馬根性が疼く。
私は口元に笑みを浮かべて、今度は私がりっちゃんに迫っていった。