冷たいカレシ【ぎじプリ】
冷たいあなた
***


「三上、訂正してやり直し」

お昼休みが終わってデスクに戻ると、訂正箇所つきのメモと一緒に置かれていた書類を見つける。

ああ、なんて事だろう。

お昼下がりのポカポカ陽気。
外は寒空だけれど、社内は暖かく、おなかもいっぱいで眠くなる時間帯。

そんな中で彼の瞳がキラリと光った。

「午前中に、しっかりと確認しなかったお前が悪い。たった数枚の書類清書にいつまでかかっていた」

彼の言葉がグサグサ突き刺さる。

「すみません……」

「俺は午前中、お前が書類をあげるのを待ってやったんだぞ」

「はい。存じ上げています。でも、急いでいるって言うから……」

「言い訳はいいから、さっさと書類を作成しろ」

私は彼をちらりと見て、溜め息をついた。

冷たくて、すぐに突き刺さるような言葉を言う彼は、それでも部内のみんなの人気者。

いろんな形で皆をまとめ上げ、しっかりと真面目に仕事をこなす姿は憧れる。

……どーせ、私はぼんやり仕事しちゃっているんだけどさー。

またちらっと見ると、冷たく見返された。

「またこの間みたいに、慌てて書類を渡しに行こうとしてコケるなよ?」

たまにはそんな言葉もくれたりする。

「……心配した?」

「するか馬鹿。俺がいたから良かったが、いなかったらどうなっていたと思ってる?」

たぶん、持っていた書類をぶちまけて、また時間がかかったことだろう。

あの時は、彼がちゃんと書類を掴んでくれたから、最後のページが少し折れちゃったくらいで済んだんだ。

「その節はお世話になりました」

「何を近所のおばさんみたいな事を言っているんだよ、お前は」

呆れたように冷ややかに突き放す彼だけど、私はそんな彼にお世話になりっぱなし。

パソコンの電源を入れて、ワード画面を出しながら苦笑をする。
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