あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
「私はそうなればいいと思います」


 今は付き合っていて、フランス留学が終わって帰ってきたら、結婚をするという予定となっている。でも、それは今のことであって、フランスから帰国して小林さんの気持ちが変わってなければの話である。


「それなら早く帰って食事の用意をするとかないのか?フランスに行く前に一緒にいたいとかないのか。俺が言うのも可笑しいけど」


 中垣先輩は人と関わるのが嫌いで、仕事以外のことで話しをすることは少ない。でも、こんな風に声を掛けるということは、中垣先輩が私のことを心配をしてくれているからだと思う。


 フランス留学に行く私を心配しているのだろう。


「残業らしいです。メール着てました」


「そうか。でも、早く帰った方がよくないか?フランスに行く準備もあるだろうし」


「いえ、荷物は最低限の物しか持っていきませんし」


「そうか…でも、今日は帰れ。俺が気になる。上司命令だ。15分以内にここから出ないとパソコンを強制ダウンする」


 中垣先輩の時限爆弾のような宣言に私は…。背中にゾクッとしたものが流れた。研究をするものにとってパソコンの強制ダウンは効果絶大で…。私には選択肢はなくなる。


「それって、酷くないですか?」


「一か月もないんだ。もっと自分のことをした方がいい」


 仕事をしていると忘れそうになるけど、私には時間がないのだった。でも、昨日の今日でそれが自分の現実と言うのを忘れてしまいそうになるのだった。
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