あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】

実働の始まり

 朝は私が起きようと思っていた時間を三十分も早かった。時計はきちんとセットしていたのに、自然に早く目を覚ました。今日は初出勤。自然と緊張している私がいる。営業一課に転属した日も緊張したけど、それでも今日のように緊張はしていない。


 挨拶はやっぱりフランス語よね。日系企業とはいえ、キャルさんがいうのは日本人は誰も居ないらしいし。上手に発音できるだろうか?もっと、勉強しておくか、スクールに通っていればよかったと、後悔ばかりしている。研究所に持っていくつもりのお土産は私の研究荷物と一緒に先に研究所に行っている。


 研究資料はあるのだから大丈夫だと自分に言い聞かせても不安が付きまとう。

 
 キャルさんが日本語を話せるとはいえ、会話の殆どはフランス語。分からないことがある度にキャルさんに通訳して貰うわけにもいかないから、日常会話が最大の課題でもある。いくら自分で勉強していたとはいえ、これが通用するなんて思ってはいない。


 私は溜め息を零しながら起きると、会社に行く準備をする。朝食は…食べれそうもなかった。今日は研究所までキャルさんと一緒にいくので準備が出来たらキャルさんが私の部屋まで来てくれることになっている。


 キャルさんがチャイムを鳴らしたらすぐに出掛けられる準備は出来ている。準備を終らせた私は…ソファに座ったまま身体を緊張で強張らせていたのだった。
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