あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 パスタをフォークに巻きつけながら女の子たちの話を聞いている時のことだった。不意に、話題がフランスの交換留学の事になった。中垣先輩に決まった話だからと私は何気なく聞いていると女の子の言葉は私が知らないことを話しだしたのだった。


「中垣さんって本当に凄いのね。フランスでも成果を上げてから帰ってきそう」


 それは私も納得のことだし、あの性格だからフランス留学に行ったからには成果を上げてくると思う。


「でも、聞いた話によると、フランス留学はほぼ坂上さんに決まっていたのを急に覆したから、所長にその分、今回の研究を成果を上げてから行くって断言したことで話が付いたらしいわよ。それと、本社の高見主任が動いたとも聞いているけど、中垣さんが行くと言わなかったらどうなっていたかしら」


 そう言った彼女の言葉に私は身体が固まるのを感じずにはいられなかった。私は単なる候補だと思っていたけど、実は私がフランス留学に行くことに決まっていたということになる。そうでないと私に決まっていたのを覆すということにはならない。

 
 仕事はそんなに甘いものじゃない。だから、二週間の期限で私の気持ちを汲んで本社の高見主任が動いてくれていたのを私は知っている。でも、中垣先輩が行くと言わなかったらどうなったのだろう。他の研究員に話が言ったのか、それとも、もう一度私に話が戻ってきたのかもしれない。


 でも、結果として、中垣先輩がフランス留学を受けることで話が纏まっていた。

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