あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 中垣先輩はきっと私が何も心配しないでいられるようにと所長とやり取りをしたのだろう。所長と中垣先輩のやり取りがどんなものなのかは知らない。でも、そこに優しさが絡んでいたのは間違いないことだった。中垣先輩は言葉がとっても少ないけど、その行動には優しさが溢れている。


 私が色々考えている間も女の子たちのお喋りは続いていく。私が知らないことをどうしてこんなに知っているのだろうかと思うほど、女の子たちの情報網は凄い。小さなことを色々話してはランチの間に花を咲かしていく。その中で不意にまた、中垣先輩の事に話が戻る。


「この頃、中垣さんの帰宅時間が早いのが気になるわよね。まさか、女の人ってこともなさそうだけど」


「あのルックスだから、分からないわよ。実際に研究所にも隠れファンなんかもいるしね。本人は全く興味無さそうだけどその気になればいくらでも彼女になりたがる人がいるわ」


「確かに。あれだけ仕事の出来る男の人って、同じ研究をするものからしたら、『神』にも等しいもの。それにあの顔にスタイルはズルい。たまに白衣を着崩して歩いているのを見るけど、素敵だもの」


 昼休みのランチのおしゃべりは他愛無いことが多いのに…。今日のランチはドキドキ度合いが違う。中垣先輩は私が知る限りが仕事以外で女の人と話しているのを私は見たことがない。あまりに一緒に居過ぎて分からないけど、中垣先輩は女の子にとっては素敵な存在らしい。


「あ、そういえば私の彼がね。この前、友達が入院したから病院にお見舞いに行ったら、中垣さんが居たらしいわよ。健康診断かしら?」

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