俺様御曹司と蜜恋契約




「花!来てくれてありがとう」

翌日の土曜日。

開店したばかりの佐々木庵へ私は1番に足を踏み入れた。

「豆大福ください」

笑顔でそう言えば、朝一番の出来たてを陽太が持ってきてくれた。

今日は、陽太が小さい頃からの夢だった佐々木庵を継ぐ日だ。

陽太が作った豆大福は、陽太のお父さんが作るそれと味と触感がまったく同じだった。ここ何年も修行をして陽太は『佐々木庵の豆大福』の味を習得したのだろう。

「花。唇に粉がついてる」

「え?」

陽太に言われて手の甲で口元をぬぐえば、そこには豆大福のまわりにかかっている白い粉がついていて。

「小さい頃と変わらないなぁ花は。唇にたくさん粉つけながらうちの豆大福食べてたよな」

「そ、そうだったかな」

照れたように笑えば、そんな私を見て陽太も笑った。

会わなかった2年間なんてきっとすぐに埋められる。ううん、埋めるんじゃない。今までのような幼馴染にはもう戻れないかもしれない。でもだったら新しく関係を良い方へ変えていけばいい。

2年間も陽太への忘れられない想いに悩んでいたのに。たった昨日一日会って言葉を交わしただけでその想いがスッキリとするなんて。

気まずいとか思わないでもっと早くこうして陽太に会っていればよかった。そうしたら2年も陽太と会わない日々を続けなくてもよかったのに。

なんて後悔しても時間は元には戻らない。前に進もう。

長かった私の初恋がようやく終わったような、そんな気がした。

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