俺様御曹司と蜜恋契約
その足ですぐに向かったのは優子の実家、桐原生花店だった。

私たちは場所を変えて森堂公園へとやって来た。

「花。ごめんね」

優子が突然、頭を下げる。

「ずっと花に謝りたかった。陽太への想いを花に打ち明けたときの私、お母さんを亡くしたばかりで気持ちが一杯一杯だった。花のことを考えられなかった。花も陽太のことが好きなこと本当はずっと知ってた」

「えっ…」

私が陽太を好きなことは優子に話したことなんて一度もなかったのに。優子は気が付いていたらしい。

「私が陽太のことを好きだって言えば、花の性格ならきっと今の私に陽太を譲ってくれるって思って、わざと花に陽太への気持ちを打ち明けた」

最低だよね、と優子の表情が苦しそうに歪む。

そっか。だから優子はあのとき、ジョージさんの喫茶店であんなことを言ったんだ。私の性格に付け込んだ自分が嫌いだって。

「最低なんかじゃないよ」

そう言って、私は優子の体をそっと抱きしめた。

ごめんね。と優子は何度も私に謝るけれど、私は謝ってほしいわけじゃない。

「私は優子に幸せになってほしいと思ってる。本当だよ?」

「花」

優子も私のことを抱きしめて、それからしばらく私たちは2人で泣いた。


陽太と今まで通りの幼馴染には戻れないように、もしかしたら優子との間にも少しのわだかまりができてしまったのかもしれない。

それでも私は陽太と優子とこからもこの森堂商店街でずっと一緒にいられたらいいなと思う。


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