俺様御曹司と蜜恋契約
葉山社長は再びソファの背もたれによりかかると、顎に手を添えて何かを考えているような表情を浮かべている。

話を続けてもいいのかな…。

「あの…社長?」

そっと声をかけると、葉山社長が顔を上げる。

「ん?…ああ、ごめん。続けて」

と、先を促されたので私は話を続けることにした。


「私の実家が森堂商店街にあるんですけど再開発が進んだらお店をもう続けてはいけません。両親がひどく悲しんでいます。うちの両親だけじゃなくて商店街のみんなきっと悲しんでいます。だから、商店街の再開発をやめてもらいたいんです」


私の言葉を聞いた葉山社長の瞳が鋭く変わったのが分かった。
それに一瞬だけ怯えてしまったけれど、自分を落ち着けるためにふぅと息を吐いて言葉を続ける。


「森堂商店街にはうちの食堂の他にも30店舗ほどの小さな商店が並んでいます。どのお店もずっと昔からあの場所で商売を続けているんです。たしかに最近では前よりも人足が減ってしまったし、跡継ぎがいなくてシャッターを降ろしてしまうお店も増えました」


シャッター通り商店街。
まだそこまではいかないけれど、高齢化が進んでいる森堂商店街にもその危機は迫っている。


「それでもみんな何とかして商店街を繁栄させようと考えているし、親の跡を継いでお店を守ろうとしている人もいます」


言いながら、体に自然と力が入っていくのが分かった。爪が食い込むほど手をギュッと強く握りしめる。


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