俺様御曹司と蜜恋契約
腕時計に視線を移せば、私が社長室に来てからもう30分が経っていた。すっとソファから立ち上がる。

「大事な会議があるのにお時間を取らせてしまってすみません」

葉山社長に深く頭を下げた。

「森堂商店街の再開発の件、考え直していただけたら嬉しいです」

とは言ったものの、やっぱりそう簡単に再開発が白紙に戻ったりはしないと思う。葉山グループだって森堂商店街の場所に新しいショッピングセンターを建設することで企業の利益を見込んでいると思うし。

私なんかが、再開発をやめてください、と言ったところでその意見をすんなりと受け入れてもらえるとは思わない。

それでも、葉山グループが再開発をして壊そうとしてい商店街には、その場所を大切に思っている住人たちがいることをもっと理解してほしかった。その人たちのこともきちんと考えてもらいたい。

言いたいことは伝えることができた。

葉山社長はこれから会議があると言っていたし用事が済んだから退室したほうがよさそう。

鳴り続けている電話はきっとその会議の時間が迫っていることを知らせているんだと思う。

もう一度軽く頭を下げてから私は扉に向かって歩き出した。しかし。


「――――待てよ」


鳴り続けていた電話が切れると、葉山社長が私を呼び止める声が聞こえた。

「言うことだけ言って帰るのか?」

「………」

「まぁ座れって」

そう促されて一瞬だけ躊躇したけれど、私は再びソファに腰を降ろした。

するとまたも電話が鳴る音が社長室に響く。どうやら今度は葉山社長の方から聞こえてくるようで、スーツの内ポケットからスマホを取り出した葉山社長がそれを耳に当てた。

「――俺だ。…ああ、会議ならお前たちだけで先に始めとけ。あと少ししたら俺も行くから。………あぁ?分かってるって。こっちも大事な取引をこれからするとこなんだよ。それがすんだらすぐに行くから。じゃーな」

電話を切ると、スマホを内ポケットに戻す。

「会議があるから手短に済ますぞ」

組んでいた足を組み替えながら葉山社長が私に視線を向けた。彼の口角がきれいに上がる。

「いいよ。再開発やめてやっても」

「えっ?」

思わずきょとんとしてしまう私。
たしかに考え直してほしいとは言ったけれど……。
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