怨み赤子
ユキと付き合い始める前の勉はカッコつけたがりで、女の前ではよく調子に乗っていた。


自分をカッコよく見せるために、一緒にいる男友達をバカにすることもよくあった。


好かれてもいない子から好かれていると勘違いして、勝手にはしゃいでいたこともある。


そんな勉がここ最近ずっと大人しいのだ。


それは間違いなく、ユキが所構わず勉に『常識』を教えているからだった。


あたしはそんな勉に少しだけ同情の気持ちを覚えていた。


食器を重ねるのはダメ。


だけどゲームで20分間友人と彼氏を待たせるのはいい。


そんなユキの『常識』に付き合うのは、きっと体力も精神力もいることだろう。


そう思っていると勉がトイレから出て来た。


その途端、ユキの話はピタッと止まる。


そして笑顔が浮かんだ。


「ちょっとあたしもトイレに行ってくるから支払お願いね」


勉にそう言うと、ユキはトイレへと消えて行ったのだった。
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