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第四章
夏休みも後半にさしかかってきたときだった。

1人の訪問者がやってきたのだ。

「花音ちゃん、妹さんが来たみたいだけど?」

「はい…えっ?美音が?」

倉谷に言われて玄関へと行くと、そこには実家にいるはずの妹がいた。

「おぉー!お姉ちゃん!元気にしてたー?」

元気よく手を振っている。

「なんでいんのよ!?てか、何その荷物!?」

美音の隣には大きなピンクのキャリーバッグが置かれていた。

「お姉ちゃんのところに一週間泊めてもらおうと思ってさ。お母さんにもちゃんと言ってきたから心配しないで。」

「そうじゃないでしょ!?なんで私に許可とらないかな…来るなら来るでメールくらいしなさいよ!」

美音の勝手な行動が頭にきた。

別に美音のことが嫌いなわけではない。

でも、1人の人間としてそのくらいのことはしてもらいたい。

そのとき、倉谷が仲裁に入った。

「まぁまぁ、花音ちゃんも落ち着いて。ひとまず、荷物運ぼっか。たぶんもう集まってるだろうから。」

集まってる?

どういうことだ?

美音はどうどうと上がってきた。

キャリーバッグは倉谷が軽々と運ぶ。

美音はきちんと靴を揃えて入ってきた。

細かなところだが、こういうところは綾瀬家として教育されている。

そして、リビングには倉谷の言う通り、全員が集まっていた。

美音はぺこっと軽く頭を下げ

「こんにちは」

と言った。

「自己紹介しなさいよ」

私が隣から突っ込む。

「妹の綾瀬美音(あやせ みおん)です。私立栄園(えいえん)女子中学の2年です。一週間ですが、よろしくお願いします。」

もう1度深くお辞儀をする。

「えっ!?栄園女子って、超お嬢様校じゃん!」

望田がすぐに気づく。

「うちはそういう家なんです。私も行ってましたし。」

「うっそ!そんなに金持ちだったんだ…」

「陽南、静かにしろ」

神無月の鋭い突っ込みが望田に入る。

こんな光景は何度見たことか。

いつも通りすぎて笑えてくる。

「ひとまずこちらも自己紹介させてもらう。3年の神無月悠紀だ。」

「2年の倉谷拓翔です。よろしくね。」

「2年の望田陽南です。」

「1年、今原昴です。」

全員の自己紹介が終わると再び神無月に戻る。

「ここのルールは花音に聞け。居候だろうとルールは守ってもらう。以上」

神無月はそれだけ言って、そそくさと部屋に戻ってしまった。

いつもの神無月だな…

あのときみたいに明るく笑ってくれればいいのに。
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