ビオラ、すずらん、年下の君

でも、彼女が気を悪くした感じはない。ふうっと柔らかく唇を結んだ、あの笑顔で俺を見る。

その瞬間はまさにエアポケットだ。


ーー無理しなくていいの。


そう言ってくれてるみたいだ。


以心伝心?
無重力状態。
一緒にいると心地良い。


俺は社交的だって、みんな思ってるかもしれない。でも本当はそうじゃない。実は人付き合いがメチャメチャ面倒臭い。

でも、誰かと何かをやるのが好きで、1人でいることが苦手。それだけ。


彼女は、そんな俺を理解してくれていそうな気がする。


……ちょっと、俺、受験疲れかな?って思ったりするけど。

彼女は出しゃばりじゃないけど、自分のことも話してくれる。会社のことと飼っているペットのこととか。…いつものことだけど、俺はあんま、うまく相槌が打てない。

向こうは気を使っていろいろ話してくれるのに、俺は、うん、とか、へえとか間の抜けた返事しか出来ねえ。


ペースが掴めない。

クラスの女子となら、適当にはぐらかしたりするの得意なのに、俺ってこんな無様だっけ?

バスを降りて、彼女と別れたあとは情けなくて悔しくて、学校までダッシュして気持ちを切り替えることにしてる。





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