ビオラ、すずらん、年下の君


「どおしたの?浴衣なんて幼稚園以来じゃない?」

からかう口調でいいながら、なんか嬉しそう。


「和香子も大きくなったわね…」


帯びを結びながら、しみじみと言う。
あ、もしかしたら、私の白無垢姿とか想像しちゃってる?

ごめんね、今のところ、全っ然1ミリも予定なくて。


「お爺ちゃんも年だからね…」

と私に聞こえるように大きな独り言。耳が痛いな。でも爺ちゃんなら、あと20年は生きるよ。


「はい!出来上がり。汚すんじゃないよ。トイレ行きたくなった時のために洗濯バサミ持って行きなさい!」


「ありがとう、お母さん。やっぱ着付けできるといいね!」


「そうね。将来役立つかもしれないから和香子も習っておけば?」


そうだね、と上の空で返事をして、私は姿見の前でクルクル回ってポーズを作る。髪はお団子に結って、高い位置で白い花の飾りをくっ付けた。


白地に涼しげな忘れな草が咲く柄の浴衣は、10代の子には着こなせない柄だ。
薄桃色の流れるように描かれた曲線が痩せ見え効果もあるみたい。

このスタイルで、女子力の高さを聡太君に見せつけたかった。


なのに。

6時5分前にバス停に着いた私を出迎えてくれたのは、意外な人だった。







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