泥酔彼女

あー、確かに喉が渇いている。水が欲しい。

吸い寄せられるようにボトルに手を伸ばして受け取ろうとしたら、ひょい、と避けられた。

え、何で?

何かの手違いかと思ってまた手を伸ばしたら、またひょい、と避けられる。
その攻防が暫く続いて。


「こら月島! ここまで来て何の嫌がらせよ! 水よこせ!」

「月島、だと? 酔って暴れるお前を取り押さえて飲み会途中で抜けて、歩けなくなったお前をここまで運んでやった俺様を、呼び捨てだと?」

「月島様、お水ください」

「いやだ」


何このめんどくさい男! 私はどうすればいいんだ。
それでなくとも酔っていて、今は頭が回らないのに。

意地悪…、とか何とか言って涙ぐんだらいいとか?

いや、今更そんな風に可愛い子ぶったって、彼の前では既に私のメッキは剥がれている。
地肌が覗いていっそ黒光りすらしている自信がある。


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