陽のあたる場所へ

「何のつもりだ‥」

龍司の低く冷ややかな声に、沙織はハッとして目を見開いた。
完全に我に返り、慌てて立ち上がる。

「ごめんなさい!すみませんっ!私、寝ちゃって…。
夢、そう、何か夢を見てたみたいで…。失礼しました!」



毎日の残業続きと睡眠不足で、疲れていたのだろう…
本を読んでるうちに眠ってしまったらしい。

「は?寝てたのかよ。こんな場所で爆睡とは…。たいした心臓だな」

龍司は沙織の顔を見上げてフッと笑うと、立ち上がって、沙織に顔を寄せると、覗き込むようにして言った。

「で?…夢ってどんな?」

その視線に、沙織は思わずたじろいで、目を逸らす。

「…いえ…それは…」



夢の中で、龍司とキスをしていた。
とても濃厚なキスだった。
あの時の余韻がいつまでも唇に残っていて、忘れられない気持ちが夢に出て来てしまったのだろうか。
その映像が頭に甦り、沙織の頬は紅潮してしまう。

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