陽のあたる場所へ

「あんた、さっき、俺のこと引き寄せて名前呼んだよな」

「‥えっ?‥‥」

「キスでもしてた?それとも、もっとやらしいことかな…」

「そんなっ…」


からかうような、試すような、龍司のその言い方に、何もかも見透かされているような気がして、沙織の頬が更に熱くなる。


龍司は書棚に片手を着くと、棚を背にしている沙織の向かいに身体を寄せるようにして立った。

身動きできない、接近し過ぎているその体勢に、身体まで熱くなる。



「こうやって、ボタンをいつも一つ余分に外して…」

沙織のカッターシャツの胸元の、ボタンで合わさっている部分に人差し指の指先をかけ、軽く引っ張る。

「こんなふうにして、男の目を誘うのが楽しいのか…女って奴は」

いつの間にか、からかうような不敵な笑みは消え失せ、まるで憎しみを込めたような目で、沙織の目を見据える龍司。


「そんなつもりは…」

沙織はその鋭い視線に怯えて、身を竦めてしまう。



「夢の続き、してやろうか?…ここで」

龍司は沙織から目を逸らすと、耳元に顔を寄せてそう囁いた。


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