陽のあたる場所へ


…もう私の身体にすら、興味はないんだ…。
柳川を接待した帰り道の一件で、沙織はそう思っていた。


なのに、数日後、残業後にまた社長室に呼ばれ、抱かれた。

お互いに、そうする意味を告げることもなく、問い質すこともなく…。
ただ身体だけを繋ぎ合わせた。




しかし、もう沙織の心の奥底には、彼の意図に対する一つの結論があった。


―――私に対する彼の行動は、私を目の前から排除したいから……。

勿論、愛情はおろか、本当は身体目当てですらない。

仕事の揚げ足を取り、酷いセクハラをして、私を傷つけて、居づらくさせて…
会社を辞めて欲しいんだ…。
目の前から消えて欲しいんだ…。


…そんなこと、本当はとうに気付いてた筈。
ただ認めてしまうと惨めになるから、彼が私を抱いた事に、都合の良い意味を求めてしまっただけのこと―――





「どうして俺を拒絶しないんだ?何故、こんなふうに抱かれていられる?」

身体を離して、呟くように吐き捨てるように言った龍司の言葉はとても聞き取りにくく、しかし、冷酷に沙織の胸に突き刺さる。

そしてそれは、沙織の解釈を裏付けるのに充分過ぎる言葉だった。



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