陽のあたる場所へ


走り去るタクシーのテールランプを、ずっと見送っていた事に気付いて、沙織は我に帰る。

無意識に自分の部屋を見上げる。
電気がついていなくて暗い部屋に、一抹の淋しさを覚える。

龍司が断ってくれたことに、ホッとした気持ちと、
その反面、やっぱり少しの期待があったことにも気付いてしまった。

そんな自分に首を振ると、沙織は小さく溜め息をついて、エントランスへ向かった。





一度あんな関係になったものの、後のことなど考えていなかった。
考えられないままにそうなったのだから、仕方ない。

龍司が勝手に提案した、『契約』…
沙織にとっては、冷静に契約を交わした訳ではなく、ただ自分の感情に流されてしまっただけだ。

好きだという感情は、冷静な判断を鈍らせるどころか、時に誤らせる。


そんな自分を叱咤しながらも、契約の続きがあるのか、龍司の胸中を推し量ろうにも、全く見当がつかなかった。

< 66 / 237 >

この作品をシェア

pagetop