陽のあたる場所へ
迎え入れてくれた貴が、ジャケットを羽織り、出掛ける準備をしている。
「あ…れ? 何だか私、追い出すみたいな…」
折角の休日にいきなり押し掛け、邪魔をしたなら申し訳ないと、沙織は貴に詫びた。
「違うよ。俺、仲間からカラオケ誘われてたんだけど…。
光里が私も行きたいってブツクサ言って機嫌悪かったから、沙織さん来てくれて助かったんだよね。
だから、ゆっくりしてってね」
優しく掛けてくれた言葉は、きっと嘘に違いない。
光里が何も言わなくても、様子から状況を把握して気を利かせてくれる人だと、沙織は知っていた。
ふと、龍司のことを思い出した。
優しさなんて…まるでかけて貰った事もない。
それどころか、酷い仕打ちを受けてるのにも関わらず、好きで好きで諦め切れない。