陽のあたる場所へ


なのに、別れは突然やって来た。

五年前に亮の海外赴任が決まり、それを聞かされた時、内心、動揺したものの、「ついて来て欲しい」と言ってくれるものだと思っていた。

これを機会に結婚とかそんな流れになるんじゃないかと、友人にも焚き付けられた。
今度みんなで集まる時は、二人の婚約祝いと送別会になるのかな~?などと囃し立てられた。



しかし、数日後、亮はそんな言葉を言ってくれるどころか、「別れよう」と言った。

「これから外国で新しい事業にチャレンジして行かなきゃならない。自分にとって正念場の今、結婚はまだ考えられない。何の責任も持てないのに、ついて来て欲しいとは言えないし、待っててくれとも言えない。だから…本当にごめん」

そう言われた。

亮自身もかなり悩んだ末の決断だということだったので、どうしようもなかった。

それでも一緒に行きたい、とも、
待っていたい、とも、沙織は正直な気持ちを伝えた。


「男の27と女の27は違うだろ?俺と別れたら、沙織にもいい出会いがあって、素敵な結婚ができるかも知れない。
女性にとってのこの大切な時期を、俺が束縛する権利はないよ」




何度かの話し合いの末、そう言って、亮は旅立ってしまった。

< 80 / 237 >

この作品をシェア

pagetop