陽のあたる場所へ
音を聞きつけてなのか、偶然通りかかったのか、吉沢の慌てた声に、沙織は我に返る。
「海野さん、指!火傷してるんじゃないんですか?!」
左手を掴まれてシンクに引っ張られ、盛大に水を出した蛇口の下に突っ込まれる。
そのままの状態から少しして、水の中から出した手を見ると、親指とその付け根までが少し赤く変色していた。
「ほら。赤くなってる。もっと冷やしておかないと」
「ほんとだ。あ、吉沢くん、ありがとう。あとは自分でやるから」
「あ、すいません」
その言葉に、沙織の手をずっと掴んでいたことに気付き、吉沢は慌てて手を離した。
「海野先輩、大丈夫ですかぁ?本当にごめんなさい」
後ろでいずみが、ずっとオロオロしている。
あまりにも心配そうに言うので、こっちが恐縮してしまう。
「たいしたことないから。ホントに大丈夫だから」