恋は盲目

龍ちゃんは私の高校の先輩だった。

サッカー部のマネージャーだった私は、ずっと龍ちゃんに憧れていた。

龍ちゃんはサッカー部ではエース的存在で、先輩や後輩、同級生問わずにファンが多くいた。

茶髪で見た目は少しちゃらく見えるが、優しくてマネージャーになりたての私によく、"頑張ってるか""お疲れさま"と声をかけてきてくれた。

その優しさと笑顔に、私の心は奪われてしまった。

すれ違う度に香るシャンプーの香りが、私の心臓をとくんと鳴らす。

でも彼には彼女がいた。
私と同じマネージャーで、龍ちゃんと同い年だった。

彼女は可愛くて気も利く、誰にでも愛される女の子だった。
私には到底敵わないと思った。

だから1度は諦めようとした。
私の中の龍ちゃんへの思いを絶ち切ろうと、別の人と付き合ったりもした。

その人を好きになろうと努力した。
でもできなかった。

一緒に歩いていても、手を繋いでも、
キスをしても…

何をしていても、龍ちゃんの顔が浮かんでくる。
私は龍ちゃんとその人を常に比べていた。

"いま一緒に居るのが先輩なら良いのに"
"先輩ならこういうときどうするだろう"

私の頭の中はいつもそんなことでいっぱいだった。

案の定、その人とはすぐ終わりを迎えた。

あの人にとって私は、
自分と一緒にいるのに、他の男のことばかり考えている最低な女だっただろう。

私は煮え切らない、複雑な感情を抱えたまま毎日を過ごしていた。
そんな中、龍ちゃんは高校を卒業してしまった。

卒業式の日に告白をしようなんて考えたこともあったけれど、そんなことはできなかった。

でも諦めきれず、私は龍ちゃんと同じ大学を受験することにした。
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