アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜
「俺は父親と慕っていた人を逆恨みで殺そうとしていた人間だ。
 そんな俺がお前と居ていいとも思えない」

「大丈夫ですよ。
 最初から、女を惨殺する王様だと思って仕えてますから。

 むしろ、罪が軽いくらいです」
と言うと、父親殺しが罪が軽いか!? という顔をされた。

「……それでもお前がいいと言ってくれるのなら」
と遥人は那智の前にひざまずき、懇願するように那智の手を取る。

 那智は遥人を見下ろし、笑って見せた。

「前も言いましたけど。
 そうしてると、王子様みたいなんですけどね」

 けど、なんだ? という顔を遥人はする。

「いいですよ。
 貴方が何者でも。

 人殺しでも。
 結局は親に甘えてるだけのヘタレでも」

「おい……」

「職を失った貧乏人でも、私が養ってみせます」

 遥人はそこで真顔になった。

 結局は、路頭に迷ってしまった母のことが頭をよぎったのだろう。

「でも、……もう専務じゃないですね」

 那智は自分もその場に膝をつき、言った。

「遥人さん。
 もう一度、言ってみてください」

「え?」
と遥人がこちらを見上げてくる。
< 268 / 276 >

この作品をシェア

pagetop