俺だけ見てれば、いーんだよ。





「泉、本当に後悔しない?友達でいたほうが、ずっとそばにいられるよ?」


嫌な奴だって、卑怯だって、わかってる。

弱虫だから、これくらいの抵抗しかできない。


「それは那菜の考えでしょ」

泉はわたしの頭をひっぱたくみたいに、ぴしゃりと言い放った。

「あたしは那菜とは違う。あたしは自分の気持ちを、十夜にちゃんと伝える」



泉はすごいな。

自分に自信があるから、告白なんて、できるんだろうな。



私は悔しいけど、十夜の言うとおりブスだし、頭も悪いし、なんの取り柄もない。


十夜は泉のことは「泉ちゃん」って呼ぶのに、わたしのことは「那菜」って呼び捨て。所詮、下僕ぐらいにしか思われていないんだろう。


この扱いのひどさはなに?

ひどいよ。


十夜の周りにはいつも女の子がいて。


十夜は、どんな女の子にも優しいのに。


さっきもクリスマスを一緒に過ごす相手を「頑張って探せ」って……。

私のこと好きだったらあんなこと言わないよね。

十夜は私が他の男の子といても、何とも思わないんだ……。



なんか悲しくて泣きたくなってきた。



涙が一粒こぼれたら、その後は滝のように流れ出てきた。


「那菜!?」


泉が驚いて声を上げる。


「そうか、クリスマスひとりぼっちがそんなに嫌だったか」


泉がハンカチを貸してくれる。


私はハンカチに顔を埋めた。

いい匂い……。

女子力高すぎだよ、泉……。


「心配すんな、那菜。クリスマス一緒にいられなかったとしても、今年は最高のプレゼントを用意してあるから!」


いや、クリスマスがどうだとかは、あんまり関係ないんだけど……。


ハンカチを顔から離したら、鼻水がひとすじ、びよーんと伸びた。

「うわっ、那菜、汚っ」

泉が私を指さして笑う。


女子力低いな……私……。





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