不機嫌な恋なら、先生と

「勿体ないことってなんですか?」と花愛ちゃんは訊いた。

「自分を下に見ないってことよ。本来、そんな世界はないんだから。上も下もないのよ。知ってる?そういう風に見てるとそういう風に感じることしか起きないのよ。怖いわよねぇ」と、冗談を言うように肩をすくませた。

今更だけど、なんとなく花愛ちゃんが、KAMAさんと会ってみたいといった理由がわかった気がした。

さばさばと自分のことを可愛いと言える人って、なかなか見ないから。

自信がないと思っていた花愛ちゃんから見たら、魅力のある人に感じるのは当たり前だと思う。

そこで突然ヒカリさんが、顔を上げ、「帰るー!帰る、帰る!」と子供のように叫んだ。

「始まった」と沙弥子さんは冷静な顔で立ち上がり、ヒカリさんが歩けるか確認していると、編集長は携帯でタクシーを呼ぶ。

「ちょっと送ってくるから」と、編集長と沙弥子さんで、ヒカリさんの身支度を整え始めた。手伝おうとしたけど、「いいよ。大丈夫。いつものことだから」と制されたものだから、出ていくまでただ見守っていた。

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