不機嫌な恋なら、先生と

「どうしてすぐ転ぶ」

先生の声だと、すぐにわかり振り返る。白い息が上がると、目が合った。

「先生」

「良かった。連絡つかないから、どうしようかと思ってたけど。本当に来たんだ」

「すみません。あの携帯の充電が切れてですね。というか、急にすみません」

「いいけど。どうしたの?」

「あの……」

向き合うけど、「なんか話しづらいね。歩道の真ん中って」と、先生が言う。

人通りは少ないけど、落ち着いた気分で話す場所ではないことに気がつく。

「あ」

「寒いからどこか入る?」と訊かれたけど、首を横に振った。お店の中で面と向かったら、きっと怖くなって、気持ちをまた誤魔化してしまいそうだった。

「長く、ならないです」

少し歩くと、ビルの裏手にベンチがあった。
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