不機嫌な恋なら、先生と
「仕事っていつもこれくらいに終わるの?」
「うーん。日によるかな。今日は早い方。でも、本当にびっくりしたな。もうカケとかしないでね」
注意すると、
「ごめん、ごめん。待ち伏せしてカケっていうのは冗談。近くを通ったから、少し待ってみようかなって思ったら、なつめちゃんが本当に出てくるから、実は俺もびっくりしたんだよ」
待ち伏せをして長い時間待っていなかったなら良かったけど、遙汰くんはいまいち掴めない人だ。
「この前、ミケランジェロがさ、体調悪くなっちゃって」
「嘘、大丈夫だったの?」
「うん。ストレスからくるもので、大したことなかったから、良かったよ。環境の変化についていけなかったみたい。ちょっと悪いことしちゃった気もする」
「でもしょうがないよね」
「うん。俺も捨てられた身だから、家を探すことで必死だったわけなんだよね。あ、そういえばさ、なつめちゃん、大学も千華なの?知り合いで、大学が千華の人いること思い出してさ」
「あ、私、高校から外部に行ったから、大学も別なんだ」
そうなんだ。じゃあ、知らないかな。その人、高校からって言ってたもんなと、独り言のように言ってから、「でもなんで高校受験したの?そのまま行った方が楽だよね?」と質問した。深い意味はなく、思い付いたことを言ったような軽い話し方だった。
私は、一度中学生の頃の記憶が頭を過って、
「あ、ちょっとね」
咄嗟に言葉を濁した。
遙汰くんは、察したみたいで「ごめん、なんか変なこと聞いた」と謝る。
ううんと横に首を振ったけど、彼は黙ってしまい、ぎこちない空気が残った。