不機嫌な恋なら、先生と
しばらく無言で食事を進めて、食べ終わると、出ようかと席を立った。
このまま帰ろうと思うのだけど、タイミングが掴めなかった。
じゃあまたねと何事もなく振る舞うのがいいのか、ごめんね言い過ぎたと謝罪をするべきか考えていると、遙汰くんが口を開いた。
「なつめちゃん。本当は、俺ね、初恋だったんだ。兄貴の彼女のことが」
「うん」
「兄貴が嫌いだから彼女を取りたくて、したわけじゃなかったんだ。
たまたま初恋が、俺の兄貴の恋人で、俺が我慢できなくて、無理やり彼女にキスした。
それが兄貴にバレて、彼女は振られた。悪いのは、俺なのに。彼女が振られた。
すごい泣いてて、俺じゃ慰めることもできなくて、復縁できるように協力しようとしたけどダメで、自分が子供だって、気づかされた。
でも兄貴もさ、結局、そのくらいの気持ちだったんだよ。あの人が悪いわけじゃないのに、振るなんて、あの人を大事にしなかった兄貴がなんか許せなかったんだ」