不機嫌な恋なら、先生と
「兄貴さ、俺のことなつめちゃんになんて言ってたの?どうせ、大学もろくに行かずにフラフラしてる奴とか言ってたんでしょ?
まあ兄貴みたいに、仕事と自分の夢を両立できる奴には、わかんないよね。
兄貴の小説もつまんなくて読む気になんないけど。妄想だけで、食っていけてるのは凄いって、尊敬だけはするわ」
遙汰くんがフォークを乱暴に置き、カンッとお皿にぶつかる音が響いた。
なげやりな言い方に、今度は本当に頭にきた。
「物語をバカにするな!
あなただって役者になりたいんでしょ?自分の好きな世界をバカにされたらどう思う?
そんなんじゃ先生、家族の中に居辛くなるじゃん。只でさえ、親に分かってもらえないって思ってるのに、弟がそんな気持ちでいるなんて知ったら、悲しいよ。
共感できなくてもいいから、否定はしないでほしい。
それにね、先生は、遥汰くんのことも夢のことも、悪くなんて言ってない。むしろ応援したいって言ってた
自分で自分をバカにするのはいいけど、先生のことはバカにしないで!」
言い切ってから、言い過ぎてしまったことに気がつく。彼は、先生の弟なんだから。余計なことは話さないと思っていたのに。
だけど「なつめちゃん、言うね」と、静かに言った。口角を上げて、微笑んだ振りをしているようだった。
それが寂しく感じて、「だって、先生は、料理できないよ。それをしないだけって、言い切るんだよ。そういう気持ちでいいんじゃないかな」と言うと、その笑みが微かに深まったように見えた。