不機嫌な恋なら、先生と

昔から、先生といるとどうしても見栄を張ってしまう。八年ぶりの再会だというのに、大人になったというのに、私は変わらない。

ううん。変わった。

だってあの頃は先生に好かれたかったから、そうしてたんだ。いいところだけ見せたかった。

さっきの虚勢は、先生と再会することがあったら、見返してやりたいと思っていたからでてしまったことだし、大人になって、もう先生のことを好きだった私とは違うんですとだけ伝えたくなったんだ。

それだけ変われば、十分私は変わったんだ。

それにしても失敗したなと思った。

カメラマンに視線を投げるタレントさんと比べるなんてことはしないけど、今日の私の服装はラフすぎた。

着心地の良さで選んだ厚手のカーディガンにロンTとボーイフレンドデニム。足元は、コンバースのハイカットスニーカー。

撮影があるから、動きやすい格好にしたのもあるけど、先生も私をパッと見てOLとか、ちゃんとした社会人に見えなくて、こいつは何の仕事しているのかと気になったに違いない。

ああ、しくじった。

見返すどころか、それこそ本当に変わってないと思われても仕方ないかもしれない。

こんなことが起きるなら、普段から気を使っていれば良かったんだ。

「女子力か」

「何、急に?」

沙弥子さんが驚いて言う。
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