不機嫌な恋なら、先生と
先生は知っていたんだと思う。私が先生のことを好きだってこと、気付いていたんだと思う。
今にして思えば、子供の恋心をうまく対処できなくて、そう言ったんだってわかる。
でもそのときの私は、先生も私のことが好きで、受験が終わったら、付き合ってくれるのかもしれない。
あのキスやあの言葉はそういう意味のものだと決めつけて、思い込んでいた。
そんな妄想に胸を焦がして、先生に合格のメールをして、おめでとうの返信に頬を緩ませ、早く会いたいですなんてことを伝えたら、先生も俺もだよって言ってくれるから、さらに調子にのった。
そして卒業式が終わったら会おうという約束の日を待つのは、卒業証書をもらう順番を待つより私を緊張させた。
待ち合わせをした場所は、先生が本をくれた公園のベンチ。
あのときは、彼女の着信を見て泣きたかったのに、今日はまったく別な、新鮮な空気を吸い込んだようなそんな気持ちで先生を見ることができるのかもしれない。
時間より早く最寄りの駅には着いてしまって、向かう途中に、急に走りたくなったり、立ち止まったりしたくなった。
そわそわした気持ちがそうさせて、恋って凄いなと思った。
会いたい。早く会いたい。
はやる心を抑えきれない。
だからまた私の足を速める。
だけど、次に足を止めてしまったのは、そんな高ぶった感情じゃなかった。心に冷や水でもかけられたみたいに、寒々しいもの。