イブにあいましょう
「結婚しましょう」とプロポーズをしたのは私だった。
だって、紀章さんのことを愛しているから。
でも私の両親は、今すぐではなく、せめて私が大学を卒業するまで、結婚するのは待った方がいいと言ってきた。

生まれてからずっと両親と一緒に暮らしている私は、自分の部屋を適当に片づける程度の“家事”しか、したことがない。
掃除機をかけたこともなければ、洗濯物を干したこともない。
料理なんてもってのほか。
毎月決まった額のお小遣いを父からもらい、欲しいものがあれば、後先考えずに買うか、高額な物なら父に買ってもらう。
お小遣いが足りなくなれば、また父がくれる。
そんな環境で育った私が、結婚すると言ってきたんだ。
両親が不安に思わないわけがない。

だから両親は、大学在学中の2年を婚約期間にして、その間に、家事全般やお金の管理の仕方を私に学ばせようとした。
「それが紀章さんのためにもなる」と両親は言ったけど、私は言うことを聞かなかった。

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