イブにあいましょう
『あの・・』
『ん?どうした』
『あなたの名前、知りたいです』
『・・・本田紀章です』
『ほんだ、のりあき、さん?』と私が聞くと、彼は頷いた。

『本に田んぼの田って、至って平凡な名字に、日本書紀の紀に、文章の章って書いて“のりあき”と読む。他に、俺の何が知りたい?』
『・・・いろいろ。もっと、色んなあなたのことを・・知りたい、です』
『俺も』

テーブル越しに彼が手を伸ばしてきた。
大きく武骨な手に、スッと伸びた指。

・・・触れたい。彼の手に。

私は吸い寄せられるように手を伸ばすと、彼の手に自分の手を重ね置いた。
すかさず彼は、重ね置いた私の手を、包み込むようにそっと握ってくれた。

私は最初に重ねられた手を見た後、視線を正面に移すと、紀章さんはすでに、私を見てくれていた。

・・・好き。
紀章さんのことが好き。
そして紀章さんも・・・。

どれくらい見つめ合っていたかは覚えてない。
でも、気がつけば私たちは、お互いに穏やかな笑顔で、お互いを、じっと、ずっと、見つめ合っていた。


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