イブにあいましょう
「俺、おまえに愛想尽かしてねえよ。一度も。お義父さんが振り込んできた金も。あれ受け取ったら俺は男じゃなくなる、おまえの夫じゃなくなるって。だから慰謝料なんかいりませんって、何度も突っぱねたのに、お義父さんは頑として受け入れてくれなかった。何度行ってもおまえに会わせてくれなかった。りさ子は君に会いたがってない、離婚を望んでるって言われて・・・おまえが署名してた離婚届を見せられた」
「うそ・・・わた、私、あなたが私に会いに来てくれたって、聞いてなかっ・・知らなかった。今まで・・・」
「そっか。ま、そういうことだとは思ってたが・・・。おまえは離婚、したかったんだよな?」
「それしかないって!・・・離婚するのがお互いにとって一番最善の方法なんだ、それが、紀章さんに迷惑をかけた、せめてもの償いになるって、両親から言われて、うぅっ、わたしも、そうだって、それしかないんだって、うぅ、思って。だから、離婚届にサインして・・・後は任せなさいって、お父さんに言われて・・・ごっ、ごめんなさ、ぃ。ごめんなさい・・・」

両手で伏せた顔を覆って、何度も謝る私を、紀章さんは包み込むように抱きしめて、自分の方へ寄りかからせた。

そして彼は、私の背中や髪を撫でながら、「なぜか、おまえだけは愛想尽かすことができねえんだよ」と言ってくれた。

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