御曹司と溺甘ルームシェア
「……ああ、ココアを買いたいと思ったんだが、生憎一万円札しかなくてのう。戻るといろいろ煩いのがおるし」

会長は私の方を振り向くと、困り顔で笑った。

「ちょっと待って下さい。ねえ、小銭持ってない?」

私は後ろにいる金髪男の方を振り返り、声をかける。

「はあ?俺に聞くなよ!」

ぶつくさ文句を言いながらも、金髪男はポケットに手を突っ込み小銭を出して私に差し出す。

私もポケットからハンカチを取り出し、手の上に広げた。

「悪いけど、ここに置いてくれる?」

「……お前、潔癖症かよ」

呆れ顔の金髪男に向かって私は苦笑いする。

「……まあ、似たようなもんね」

金髪男から小銭を受け取ると、自販機にお金を入れてココアのボタンを押した。

ガラガラッと落ちて来たココアを取って、会長に差し出す。

「はい、どうぞ」

「だが、お金が……」

会長は受け取りながらも、戸惑いを見せる。
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