御曹司と溺甘ルームシェア
「気にしないで下さい。どうせ小銭ですから」

「おい、俺の金だぞ！」

後ろでキャンキャン吠える金髪男をギロッとひと睨みして黙らせた。

「私は今はココアの気分じゃないんです」

優しく微笑んで、また自販機に小銭を入れると百パーセントのグレープジュースを押す。

出てきたジュースのペットボトルを取って近くにあったベンチに腰かけた。

「おい、こら！サボるな！」

怒る金髪男を無視して、会長に声をかけた。

「良かったら一緒に飲みませんか？」

「では、有り難く頂くよ。葡萄ジュース、好きなのかね？」

会長も私の横にゆっくりと腰かける。

「ええ、ワインよりもこっちの方が好きなんです」

ペットボトルの蓋を開けにっこり微笑んで、ハッとする。

あっ、あたしってバカ。墓穴掘ってどうする。

今しちゃいけない話題じゃない！

咄嗟にグレープジュースを選ぶなんて……。何でミルクティーとか選ばなかったんだろう。
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