御曹司と溺甘ルームシェア
じいさんの隣にいる寧々は、「遅い」と口パクで文句を言い俺を睨んでいる。

「秘書から逃げ出してする事ではないと思いますが」

冷ややかな視線を向ければ、じいさんはフンと開き直った。

「わしだって息抜きが必要なんじゃよ」

「息抜きというのは、真面目に仕事をしている人が使う言葉ですよ。あなたの場合、毎日真剣に仕事をしてるとは言い難いでしょう?」

冷たく言い放てば、じいさんはニヤリと口角を上げた。

「ほお、面白い事を言うじゃないか。わしの経営手腕で会社が傾いた事があったか?」

「さあ、どうでしょう?子供の頃の事は良く覚えていないもので」

小首を傾げてとぼけてみせれば、じいさんは悔しそうに眉根を寄せた。

「可愛くない孫じゃ。寧々ちゃんのように可愛い孫なら溺愛したろうになあ」
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