御曹司と溺甘ルームシェア
8、油断も隙もない
……今まで私の髪に触れた男なんていなかったのに……。

私の張ったバリアにあっさり侵入してくるあの男。

なぜこんな私に触れるの?

髪だけじゃない。

男にキスされる事も……抱き締められる事もないって思ってた。

なのに……あいつは……。

私……完全に遊ばれてる。私が狼狽えるのを見てあいつは楽しんでるんだ。

悔しいけど、恋愛方面の経験値が違いすぎて響人に太刀打ち出来ない。

でも……あいつだって私で一生遊ぶ事はないだろう。

いずれ私に飽きて、そのうち婚約だって解消するに違いない。

響人が私に構うのは、あいつにとって見れば私が珍獣だからだ。

男嫌いで自分に楯突く珍しい人間だから、私をペットのように飼ってるだけ。長くは続かない。きっと一時的のはず。

出来るだけ響人との接触を避けて……って、家が一緒だけど……。
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