クールな社長の甘く危険な独占愛

「そうか……長尾が住んでるんだ」
寝癖のついたままの髪で、独り言のように言う。

さつきは何か返さなくちゃと思ったが、結局何も思いつかない。

「今、十時半か……」
社長の独り言は続く。

「めんどくせえな」

さつきは社長の『めんどくせえ』という言い方に、思わず顔を見つめてしまった。
いつもとはあまりにも違う。そんなこと死んでも言わなさそうなのに。

「そうか……おまえが隣」
また独り言。

車を走らせながら、しばらく無言が続いた。

何を考えてるんだろう。
よくわからない。

「長尾、今日仕事しろ」
「……はい?」
「これから付き合って」

さつきはこみ上げる絶望感を必死に隠した。

頭痛薬がカバンに入っていたか、わからない。
社長と二人で仕事。
夕方頃にはひどい頭痛に悩まされていること必至だ。

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