クールな社長の甘く危険な独占愛
「君たちはもう帰れ」
夜の八時半。社長が言った。濃紺のジャケットに、ブルーのタイ。左手に資料の束を抱えている。
「いえ、もう少し」
さつきは首を振った。社長がまだ会社に残るなら、さつきにも仕事があるはずだ。
「いや、いいから」
社長は頑なに首をふった。
最近はこのくらいの時間に強制的に秘書を帰らせる。そうでなければ毎日徹夜になってしまうからだろうが、そんな思いやりも歯がゆかった。以前の社長ならそんな気遣いもなかったはずだ。
社長は疲れていた。綺麗な顔にクマを作って、心なしか頬がこけている。
「会議室の準備できました」
秘書室にリカが顔を覗かせて言った。これから役員が集まっての臨時会議なのだ。
「遅くまでご苦労さま。篠崎さんも帰っていいよ」
社長が言った。
「……そうですか? でも」
リカがもじもじとする。
「気にするな。就業時間は過ぎてるんだから」
社長はそう言って、会議室へと向かう。
「ありがとうございます。お疲れさまでした」
リカは深く頭を下げた。
「長尾も帰れよ」
社長が軽く手をあげて、秘書室をでて行く。
「あ、はい」
反射的にそう返事してしまった。