クールな社長の甘く危険な独占愛
「もう……ほんとに……どうして」
さつきが胸の中で、モゴモゴと言う。
「お前、なんで好きでもないやつに抱かれたりするんだよ?」
「……ほっといてください」
「さつきはそんなタイプじゃないだろう?」
「社長には関係ありません……」
さつきの頭のてっぺんを見ながら考える。
確かに関係ない、けど。
なんでこんなにイラっとするんだ?
「俺の秘書だし」
言ってから、いまいちの説得力だなと思う。
「……変ですよ」
さつきが言う。「社長、変です」
「……そうか?」
なぜかさつきを抱きしめる腕に力が入る。
「私、あのまま実家にいたら、すぐに結婚しなくちゃいけない気がして。それは嫌だったんです。でも父親との約束も守りたかった。だから『しばらく東京に行かせて欲しい』って、彼にお願いしました。最初……『不安だ』って言われて『行かせられない』って。私は必死でした。どうしても彼からしばらく離れたかったから」
さつきが和茂の脇腹あたりの服をぎゅっと握る。
「私、言いました。『今夜あなたのものになります。だから信じて』って」
さつきの身体が細かに震える。
「ずっと……ずっと、あの夜のことが引っかかっていました。納得して抱かれたけれど、でも彼も、父も、そして自分自身をも裏切ってしまったような気がして」
和茂は無意識にさつきのあたまを優しく撫でる。
「はあ」
さつきがため息をつく。
「なんで社長にこんな話を……」