クールな社長の甘く危険な独占愛

昌隆の姿が見えなくなると、さつきは和茂の脇を駆け抜けて、マンションの中へ入っていく。

「おい」
和茂は思わず手を伸ばしたが、すんでのところで掴み損ねた。

「くそっ」
和茂は後を追いかけた。

さつきはエレベーターのボタンを押したが、追いつかれるとわかったのか、エレベーターを諦めて外階段の方へ走り出した。

なんで追いかけてるんだ?
放っておけばいいのに。

走りながら、和茂は自分が理解できない。
こんなに自分の行動をコントロールできなかったのは初めてだ。

春の空気が肺いっぱいに吸い込まれる。
階段は予想以上にきつくて、肩で息をする。

さつき、随分足が速いじゃないか。
人は見かけによらないって、言うもんな。

三階の踊り場でさつきの袖をつかんだ。

「やだっ」
さつきがわめいて手を離しそうになるが、和茂は握る手に力を込めた。そのまま思わず抱き寄せた。

衝撃でさつきのメガネが跳ね飛ばされる。

「……離してくださいっ」
「無理」

『無理』と言いながら、なぜ無理なのかわからない。

自分の精神状態が不安だ。

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