彼は黒で彼女は白〜俺様社長の甘い罠〜
数時間後、無事に長野に着いた二人。飛行場の外に出た雪は、思わず身震いした。

東京と、違って、長野は何十センチもの積雪。温度もマイナスだ。コート一枚では寒いその上…

「キャッ!」

ハイヒールでは、滑って歩きにくい。
琉偉に助けられ、怪我をせずに済んだ。

「…大丈夫か?」
「はい…すみません、ありがとうございます」

助けられただけとはいえ、抱きしめられる体勢に雪は頬を染めた。

「…急いだ方がいいな。雪がどんどん降ってくる」
「…はい」

二人を乗せたタクシーは長野工場に向った。

火事は大した事はなかったが、工場はストップしたまま、琉偉は的確に、指示していく。雪も、女子工員、特に子供がいる人達を優先にフォローしていく。

「黒澤社長、本当にすみません」

工場長が琉偉に謝罪する。

「地震は、いつ起こるかわからない。君のせいじゃない。後どれくらいで復旧しそうだ?年末だからな、出来るだけ早く復旧できるようにしてほしい、それだけだ、頑張るぞ」

その言葉に、工場長が救われた事など、琉偉は知らない。本当なら叱責されても仕方ないのに。いつも険しい顔をしている琉偉だが、どんな時も社員の事を一番に考えているのだ。
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